ノウフクの現場には人を育てるヒントが散りばめられている！
人を育てるヒントがたくさん散りばめられているノウフクの現場。人との向き合い方であったり、障がいがあってもなくてもビジネスでも教育でも子育てでもスポーツでも、人を育てる根っこは同じといったことなど、非常に多くのことに気付き学び深まり、自分の成長につながったと感じるノウフクとの出逢い。
ノウフクマガジン#144
情熱の連鎖
NEW 2025年1月13日
ノウフクの現場には人を育てるヒントが散りばめられている！
人を育てるヒントがたくさん散りばめられているノウフクの現場。人との向き合い方であったり、障がいがあってもなくてもビジネスでも教育でも子育てでもスポーツでも、人を育てる根っこは同じといったことなど、非常に多くのことに気付き学び深まり、自分の成長につながったと感じるノウフクとの出逢い。個人的な思い出話が中心となり心苦しいのですが、それでもノウフクの素晴らしさを少しでも感じ取っていただけると嬉しいです。
ノウフクとの出逢い
「のうふくれんけいって何？余計な仕事が増えて面倒くさいな…」
2012年、三重県農業大学校在籍時に「農福連携」の言葉を知った時に感じた正直な思いです。当時の三重県庁、農福連携を推進していこうという動きになり、その一環として、農業大学校でも学生向けのカリキュラムを作ることに。先の思いは、そのミッションの担当に図らずも指名された時に生まれたものです。実は、あまり前向きな気持ちは持てずに始まったノウフクと関わり。ただ、人生何が起きるか分からない。この出逢いがきっかけで、想像もしなかったかけがえのない経験が積めるとは、その時は露ほどにも思っていませんでした。
「本当に農業ができるの？」と感じつつも、カリキュラムのイメージを膨らませるため、まずは現場に出向きいろんな方の話をうかがいました。そこで言われたのが、「障がい者も健常者も一緒」ということ。「だから、農業大学校の学生には、まずは障がい者のことを知ってほしい」といった意見もいただき、「座学だけではなくて、農作業をしながら障がい者の皆さんと学生たちが交流できるような実習なんておもしろそう」と、カリキュラムの具体的な形ができ上っていきました。
そして開講、その実習の日。最初は障がい者のみなさんも学生も緊張の面持ち。でも徐々に打ち解けていき、協力し合いながら一緒に作業を進めているし、おしゃべりの輪があちこちでできたりと、コミュニケーションが深まっている様子が見て取れました。そして今でも鮮明に覚えているのが、実習が終わった時の学生の表情、輝く笑顔とはこういうものだと。達成感、充実感あふれるとても素敵な表情をしていました。学生にとって掛けがえのない経験を積めたのだと思います。それは私も一緒で、こういった現場での経験を積んでいき、農業にひたむきな障がい者の皆さん、そんな障がい者の皆さんと真摯に向き合う支援員や農業者の方々と接するうちに、ノウフクにどっぷりと浸かっていったのでした。
全国のノウフクと関わる方との出逢い
そして2014年より三重県庁の農福連携所管課の担当に。この時の最大のミッションは、2016年に開催した「農福連携全国サミットinみえ」のレガシーを活かし、都道府県（行政）のネットワークをつくること。いずれの都道府県でも、農福連携を推進しようとする動きが始まっているのは感じていましたが、主体は福祉部局であったり農林部局であったりと様々。この縦割りを取っ払って横のつながりが強まれば、ノウフクがもっと全国的なうねりにつながることを期待してのミッション。
ネットワーク設立に向けて、それまでも密に情報共有していた島根県農業技術センター（当時）宮廻さんに相談したくて出雲まで飛んで行ったり、設立の趣旨について47全都道府県の農福連携担当の方と意見交換したり。また、その頃は、後に創設されたノウフク・アワードで受賞されるような全国の第一線で活躍されている方々を三重にお招きしてご講演いただいたり、反対に視察で現場にうかがったり。さらに、霞ヶ関や永田町界隈に足繁く通うことになったりと、とにかくノウフクと関わる多くの方からお話をうかがい、強すぎる刺激を受けまくっていました。いろんな方との出逢いから、新しいことへの挑戦が生まれてくるのが、とても楽しかったのを覚えています。
「農福チーム」での３年間、ご縁に感謝
そんないろんなご縁があったからか、2018年、農林水産省で農福連携を所管している農村振興局都市農村交流課へまさかの出向に。実は当時、省内で農福連携と言ってもおそらく知らない職員のほうが多い、認知度は高くないといった状況でしたし、私自身も、農福連携の関連事業（予算）を少しでも現場で使いやすいものにするというのが最大のミッションと考える程度（要するに大過なく過ごせれば、と考えるくらい）でした。ただ、半年して風向きが大きく変わります。事務次官直轄の省内推進チームが発足され、この連載では何度も紹介されています、各省の垣根を越えてノウフクを強力に推進していこう、国の計画を策定しようという大きなうねりがやってきたのです。「農福連携というのは、障がい者の皆さんが農業で活躍できるように支援する取組で…」なんて前置きしなくても、ノウフクという言葉が通じる、誰もが知っているといった雰囲気が醸成されていくのをひしひしと感じていました。
そのうねりに飲み込まれ、取り巻く状況は一変。全国の情勢の整理といった首相官邸での会議の設置や農福連携等推進ビジョン策定に向けた基礎資料作成から、毎週のように質問が出て激増した国会対応、関連予算枠創出のための省内関係課との調整、斜め向かいの重厚な建物での丁々発止の折衝など、なかなかの重さのミッションが目白押し。毎日のように帰宅するのは日付が変わってからと、黒色一辺倒と疑わしき霞ヶ関での仕事は噂に違わず大変でしたが、当時の課長の豊さん、室長の難波さんといった素晴らしき船頭のもと、自分たちの話をしっかりと受け止めていただき、かつ、失敗を怖がらなくていいと明確に伝えていただいたことによる安心感から、うねりに溺れることもなく、全力で駆け抜けることができたと実感です。国の施策の大きな転機に立ち会えるなど、一介の県職員としては普通はあり得ない経験を積ませてもらえたご縁に感謝です。
正直なところ、身体か心かどちらかは壊して三重に戻ることを覚悟していました。でも、幸いなことに、そんなことは微塵もなし。当時は、「農福連携推進室」が設置される前ということもあり、自分たちで勝手に「農福チーム」と呼んでいたのですが、良きチームメンバーに囲まれていたからこそで、ご縁あった皆さんには感謝の気持ちしかありません。これまでノウフクなんて知らなかったメンバーが、その後異動になっても「また、ノウフクの仕事がしたい！」と言ってくれるのを聞くと、当時は、TV番組の制作、ノウフク商品のブランディング、支援人材の育成プログラムの策定など、いろんな仕事を一緒にしてきましたが、また同じメンバーと一緒に仕事がしたい、なんていう妄想に駆られてしまいます。
この取組が広がり、農業で当たり前に障がい者の皆さんが活躍される社会や、さらに、農福連携という言葉自体がなくなるくらいの社会となることへの想いが受け継がれることを願って、私の文章を終えたいと思います。
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