ノウフクマガジン#44

トイレがあるから働ける!【トイレラボ2022】第1回ワークセッション
ラボレポート
2022年10月19日

トイレがあるから働ける!【トイレラボ2022】第1回ワークセッション

2022年度のノウフク・ラボ01 トイレ 第1回ワークセッションが、9月22日(木)にオンライン開催されました。

ノウフク・ラボは、「異なるものとつながる力!」を合言葉に、社会課題の解決や新たな価値創造を図りながら「地域に暮らすすべての人が豊かで幸せに生きられる」共生社会の実現を目指しています。このトイレチームも研究員のみなさんと一緒に活動を続け、無事に2年目を迎えることができました。

今年度の全体目標は「ノウフク・ラボの木に果実を実らせる」ことです。トイレチーム第1回ワークセッションはその目標に向けた第一歩となりますが、平日午前中の開催にもかかわらず、ノウフク現場の方々、大学教授、行政、一般企業などの様々な分野から25名もの研究員のみなさんにご参加いただくことができました。昨年度に比べると倍以上の参加者で、ノウフク・ラボの木が確実に育っていることが感じられ、事務局一同うれしく思います。

ワークセッションも大変盛り上がり、今年度の統括マネージャーであり、トイレチームリーダーを務めるNPO法人たがやす理事 天野雄一郎がこだわる「ワクワク感」に溢れた雰囲気で、研究員のみなさんから様々な意見をいただくことができました。

ノウフク現場でのトイレの可能性だけでなく、「果実を実らせる」ための具体的なアクションにもつながるとても有意義な場となりましたので、ご報告いたします。

トヨタ自動車が目指す「新しいトイレインフラ」

ワークセッションの前半で最初にお話いただいたのは、トイレチームをサポートいただくトヨタ自動車の内山田さんです。内山田さんには昨年度からご参画いただき、開発中の移動型バリアフリートイレ「モバイルトイレ」に関する情報を提供いただいていましたが、今回のワークセッションではそのモバイルトイレの開発過程からお話いただきました。

モバイルトイレが必要なのは障がい者だけではない

企画当初、このモバイルトイレは障がい者(特に車いす利用者)が外出するときのトイレ問題を解決することからスタートしたそうです。そのため、バリアフリー設計のトイレを車内に設置し、かなり大型の車両となりました。そして、それを牽引しながら各種イベントやスポーツに参加する障がい者の方々に利用してもらい、社会的認知度を高めていったそうです。

さらに開発をすすめるため、モバイルトイレの有用性を検証しようと様々な場所でユーザーの声を集め、活用シーンに合わせてどんなユーザーに使用してもらえるか検討するうちに、モバイルトイレの可能性が徐々に広がっていきました。

スタートは「障がい者のトイレ問題をなくす」ことだったわけですが、様々な活用シーンを想定するうちに、モバイルトイレの対象が障がい者だけでなく、高齢者や家族連れ、女性といった健常者にもニーズがあること、そして福祉を含めた「社会全体のうれしさ」の実現につながることが見えてきたそうです。

ノウフクの現場ではモバイルトイレの日常的稼働を目指す

活用シーンとユーザーの可能性が広がった結果、トヨタ自動車ではモバイルトイレの提供価値を次のように設定し、社会における「新しいトイレインフラ」を目指しているとのことです。

トイレ設備の設置自体が難しい圃場にこのモバイルトイレを導入できれば、ノウフクの現場にとってこれほどありがたいことなないでしょう。ただ、日本の農地は道幅が狭く、路面状況も様々なため、モバイルトイレの開発ハードルはかなり高いと言えます。

さらに、ノウフクの現場に従事する作業者にとって、トイレは日常的に必要なものです。モバイルトイレが月に2~3回程度圃場に来てくれればよいというものではなく、まさにインフラとして日常的に備わって欲しい設備です。

内山田さんは、このトイレチームへの参画を通じて、ノウフクの現場で本当に何が必要なのか、どんな仕組みでどう運用するのが良いのか、現場の声を集め、出来る範囲で形にし、モバイルトイレの日常時での稼働を目指すとのことでした。どのようになるのかとても楽しみです。

トイレ問題を議論するための4つのポイント

続いて神戸学院大学の川本先生、金城学院大学の橋川先生から、ノウフクの現場におけるトイレ問題と今後の在り方について、データを交えながら解説いただきました。

トイレ問題の議論が分散している

トイレラボアドバイザーとして参画する川本先生からは、最初にトヨタ自動車が開発しているモバイルトイレについて、「いつでも・どこでも」というモバイル化と、「だれでも」というユニバーサル化という点から、ノウフク現場での可能性が広がることをお話いただきました。

一方でモバイルトイレがノウフクの現場に普及するのはまだ先の話です。そのため、トイレ問題に関する議論はまだまだ続けられることになりますが、現在、様々な立場の人たちがそれぞれの視点で課題を取り上げていて、問題は集約されることなく、むしろ分散している傾向にあるとのことでした。

ノウフクの現場でトイレ問題はすでに表面化している

一方で橋川先生は、ノウフク現場でトイレの課題がすでに表面化していることを具体的に指摘しました。

農福連携における実態把握調査の統計データを提示し、圃場にトイレ設備がない農家の場合、作業者として雇うのが男性のみだったり、自治体の補助金を利用してトイレを設置できるにもかかわらず、実際に補助制度の活用に至らず、トイレが設置されていないなど、様々な問題をファクトベースで示しました。

トイレ課題を論じる際に抑えるべき4つのポイント

トイレの有無は障がい者の働きやすさに直接つながるため、圃場へのトイレの設置の重要性は雇用主も十分把握していると思います。しかし、やみくもに圃場へトイレを設置すれば済むという話ではありませんし、従事者の性別や特性に応じてトイレを考える必要も出てきます。

そこで、農福連携におけるトイレ問題の解決に向けた議論をする際、抑えるべきポイントをご提案いただきました。

この4つのポイントを軸に議論を進めることで、課題解決に繋がるだけでなく、ノウフク現場におけるトイレの可能性が大きく広がる内容でした。トイレチームもこのポイントを取り入れ、トイレ問題を議論していきたいと思います。

トイレチーム第1回ワークセッションのグラフィックレコーディング(画像をクリックすると拡大表示されます)

対話を通じて浮き彫りになったトイレと雇用の密接な関係

ワークセッション後半のディスカッションでは、日頃からノウフクの現場に携わっている研究員の方から、作業者の皆さんが直面しているトイレの課題についてうかがうことができました。そこでの対話を通じて、利便性や衛生管理だけでなく、「働く」ということに関わる根本的課題が見えた場でもありました。

トイレがない=働けない!?

研究員が日頃感じているトイレの課題はとても切実なものでした。圃場にトイレが無いという基本的な問題だけでなく、たとえトイレがあっても、衛生面だったり、女性への配慮といったセンシティブな問題も出ているそうです。

特に女性にとってのトイレ問題は労働環境に強くつながっているため、トイレがないことがノウフクの現場で働くことの妨げとなってしまい、雇用機会を奪う原因にもなっていることがわかりました。

自治体から支援を受けるために、どう議論する?

トイレが職場にあることは、作業者にとって絶対条件とも言えます。さらにトイレ問題が雇用に直接関係している以上、雇用主にはいち早く解決して欲しいと思います。ただトイレ設備を整え、衛生面に気を付けながら日々運用するためには、それなりにコストがかかってくるため、経営という基準での判断が必要になってきます。

そこで頼りにしたいのが自治体からの補助です。

今回のワークセッションに参加いただいた研究員の中には、自治体に所属されている方がいらっしゃり、アドバイス含め、具体的にお聞きすることができました。

自治体は基本的に地域全体のために動くため、トイレを設置して欲しいという要望をいただいた場合、一つの圃場のためではなく、圃場のある地域にどのくらいの利用があるのかわかると、整備へ向けた議論がしやすくなるそうです。

農福連携に限らず、周辺の人も利用できたり、あるいは災害時に役に立ち、それが住民の生活水準向上につながる、そういった提案が含まれていると、自治体としては検討しやすいそうです。利用の用途が限られず、たくさんの人が使える、利用頻度があるという要素が含まれていれば議論が深まる、そうすることで、予算への検討につながる確率も高くなるとのことでした。

ワークセッションでの対話を通じて、ノウフク現場の声を聞くだけでなく、自治体の考えも知ることができた非常に貴重な場だったと思います。

ディスカッションの様子(画像をクリックすると拡大表示されます)

今年こそトイレキャンプを!

2年目に入ったノウフク・ラボの目標は「ノウフクの木に成果を実らせる」です。そのために、トイレチームは東広島市の福祉事業所を運営する「アソシエイト・ファーム」にご協力いただき、年内に「トイレキャンプ」を開催することが決まりました。キャンプの目的と日程候補は次の通りです。多様な立場の研究員やノウフク現場の利用者や職員などが対話し共創する場のことを「トイレキャンプ」と呼んでいます。

「トイレキャンプ」の概要(情報は9月22日(木)時点)

キャンプではノウフク現場のフィールドワークや自治体の発表だけでなく、トヨタ自動車開発中のモバイルトイレの設置と試乗体験を計画しています。またトークセッションでは、参加者全員が車座になってワイワイやりながら、リアルな対話をすることも計画しています。

トイレキャンプ開催予定地の下見の様子

今回のワークセッションでは、対話を通じて非常に多くの気付きを得ましたが、トイレキャンプではそれがリアルな場となるわけです。また圃場でのフィールドワークを通じて、作業者にとってトイレがどれほど安心・安全をもたらすか、体感できるのではないかと思います。

なお、トイレキャンプの成果については2022年12月に開催予定の中間発表会で報告する予定ですので、楽しみにお待ちいただければと思います!

手話でWCのポーズを取る研究員のみなさん

会員専用ページでは動画を配信中!

農福連携等応援コンソーシアム会員の皆様には、トイレラボの様子を動画でご視聴いただけます。2022年度のパスワードは、2022年8月19日にコンソーシアム事務局からお送りしたメールをご確認ください。

投稿者: ノウフクWEB編集部

ノウフクの情報を幅広く発信いたします。

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