ノウフクマガジン#45

小いもプロジェクト
ノウフク×〇〇
2022年10月28日

小いもプロジェクト

みなさんこんにちは。ノウフク・ラボ運営チームの天野です。

ノウフクマガジン#8でご紹介したように、私 天野が担当するコラムでは、「ノウフク×〇〇」の〇〇の部分について、日頃の実践や探求や挑戦や迷いや違和感やモヤモヤをストレートにお伝えしながら、思ったこと感じたことをありのままにお届けしていきたいと思います。

今回のテーマは「小いもプロジェクト」

さてさて今回は、社会福祉法人白鳩会、そして、私が地元の仲間たちと立ち上げたNPO法人たがやすが事務局をつとめている、大隅半島ノウフクコンソーシアム(以下ONC、ノウフクマガジン#35で1年の活動を紹介)が進めるプロジェクトの一つ、「小いもプロジェクト」についてお話しします。皆さんにONCの活動及び今回お話しする廃棄されてきた小いもたちのこと、そして、農福連携の現場や地域が抱える課題についても知っていただき、アドバイス等いただくことができれば嬉しいです。あくまでローカルの一事例ではありますが、どうぞお付き合い下さい。

きっかけは、役員会

ONCでは定期的に役員会を開いているのですが、副会長である株式会社オキスの岡本社長から提案がなされたことがきっかけで、今回ご紹介する小いもプロジェクトはスタートしました。オキスはなんと経営面積400haを誇る大型農業法人。パウダー工場や運送会社も持ち、林業や福祉事業もてがける大隅半島を代表する企業です。

廃棄される小いもは、なんと年間25トン!

じゃがいもの収穫する大型機械「ハーベスタ」
これまで廃棄されていた小いも

そんなオキスがじゃがいもを収穫する際は、とても大きい「ハーベスタ」を使用します。なので、規格外の小さいものは機械から自動的に弾かれてしまうんです。そうやって廃棄されてしまう小いもは、なんと、オキスだけで年間25トンに及びます!25トン、、、!!普段農業に関わらない方には想像もつかない量かもしれません。「お弁当に入ったり、そのまま食材としても利用できるのにも関わらず、小さいというだけで売り物としては規格外にされるのはもったいない」ずっと気になっていた岡本社長。雨に濡れると腐ってしまうじゃがいもは、梅雨前の収穫が勝負。今まで、人材不足を理由に手をつけられずにいました。そこで先述の役員会で提案されたのが、福祉施設と連携した農福連携による小いもプロジェクトだというわけです。

小いもプロジェクトスタート!

熱心に小いもを収穫する利用者ら

じゃがいも1回の収穫につき、参加した人数は約20名。ONC会員の3事業所の利用者さんと、スタッフに小いもの収穫だけではなく、マルチはぎ(作物の株元を覆うマルチシートをはぎ取る作業)、運搬、仕分けなど、現場の工程をできるだけ担ってもらいました。中にはマルチはぎ機を使う利用者さんも。勤務時間は事業所ごと、関わる利用者さんごとに違っていて、体力の続く午前中、集中力の続く数時間など、事業所のスタッフが利用者さんの特性に合わせてスケジュールを調整します。オキスと3事業所のスタッフ、ONC事務局が毎日LINEグループで勤務時間や人数、ほ場の場所などの情報共有をしながら進めました。ONCの理事を務める事業所の代表が、自主的にオキスと福祉事業所の間に入って様々なとりまとめをしてくれるなど、このプロジェクトに積極的に働きかけてくれたおかげで、会員同士の信頼関係も生まれました。

収穫した小いものゆくえは…⁉︎

農福連携小いもプロジェクトのチラシ(表面)
農福連携小いもプロジェクトのチラシ(裏面)

収穫した小いもは、オキスが持つネットワークをフルに活用し、このプロジェクトの趣旨に賛同した地元の飲食店やレストランに買い取っていただき、売上金は福祉事業所への委託料に充てました。買い取っていただいたお店ごとに新メニューを考えてもらいお客さんに提供したり、「小いもフェア」などを開催してSNSで「#小いもプロジェクト」で発信してもらったりしました。SDGsやフードロス対策への関心が高まる中、社会貢献事業としても好評をいただきました。また、小いもは生活困窮者を支援する団体に寄付されたり、私たちが運営するNPO法人たがやすでは、食育も絡めて子ども食堂で提供したりしました。委託料は、初めての試みということもあり、利用者さんの工賃が時給500円になるように設定しましたが、今後は工賃をいくらに設定をするのが適切なのか、全国の取組に学びながら方向性を定めていきたいです。

関東へ!給食へ?広がる活動

このプロジェクトを進める中で、関東近辺の小いもを探している企業からお声がけいただいたこともあり、今後さらに大きな活動やビジネスにつながると確信しています。また、今後は子ども食堂だけではなく、学校給食、ひきこもりや不登校児支援にもつながる活動にしていきたいと考えています。

今回関わったオキスと福祉事業所の間では「他の野菜での連携もできるのではないか」という新たな展開も。コンソーシアムでのプロジェクトだからこそ生まれる副次的な効果も確認できました。農福連携で価値づけることのできるモノやコトの幅の広さ、器の大きさを感じたプロジェクトとなりました。

ノウフクの可能性を再認識したプロジェクトに

農業の活性化による自給率の向上、安心安全な食料の確保、環境保全、地域のつながりづくり、パートナーシップなど、農福連携によって障がい者がそれらの課題に関わり、参画し、開拓していく。農福連携は社会課題を総合的に解決していく可能性を秘めているということを、小いもプロジェクトを通して改めて感じました。労働人口の減少、とりわけ、第一次産業の担い手不足という観点だけから見ても(障がい者の生きがいづくりや意思決定が農福連携の第一義なのは言うまでもありませんが)、農福連携の仕組みは今後ますます必要とされます。みなさんもお店に並んでいる野菜や商品を選ぶとき、「これはどこからきたものだろう」「誰が作っているのかな」など、少し立ち止まって考えていただけると嬉しいです。

投稿者: 天野 雄一郎

NPO法人たがやす理事。大隅半島ノウフクコンソーシアムプロジェクトマネージャー。農林水産省認定農福連携技術支援者。ノウフクJAS検査員・ASIAGAP指導員。2030SDGsファシリテーター。社会福祉法人白鳩会花の木農場元総務。農福連携やSDGsの文脈でローカルでの場づくりや組織づくり、連携から創発されるプロジェクト運営を行う。

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