ノウフク・マガジン#20

ノウサイドな福祉
NEW 2021年12月27日

ゆずりは会モデルとして

前回に引き続き今回は、私ども社会福祉法人ゆずりは会の農福連携の実際について触れてみようと思います。

 私どもの法人は、就労継続支援B型事業所が3カ所、就労継続支援A型事業所が1カ所の合計4つの就労支援事業を展開しており、その全ての事業所で農業を営んでおります。法人にはこの他にグループホームを3拠点、相談事業所を1カ所運営しております。
 まだ、法人設立から15年と少しですから、社会福祉法人としても新参者かもしれませんし、農福連携を数十年前から行なっている先駆的な法人の方から見たら、まだまだ子どものような感じかもしれません。
 しかし、数年前から法人内でも年間を通じて農業を行えるようになり、売上も少しずつ上げられるようになってきてからは、我々の取り組みを農福連携のひとつのモデルとして確立することを目標と考えるようになりました。

ゆずりは会の特徴

さてさて、では、私どもの農福連携はどのようなものか、何が特徴的なのか。
この答えは、現在、私どもがどのように農業に向かい合っているのかをご説明するのが早いのではないかと思います。

まずはじめに、野菜の栽培は、栽培品目を絞って大規模に栽培する方法を選択しています。そして収穫となった野菜は、その多くを地元の農協や野菜卸し会社に出荷しています。品目を絞って作付けをしていることは、われわれの農業の大きな特徴と言えます。

なぜ、品目を少なくしているかというと、第一には、関わる利用者にフィットした野菜栽培を行うこと。作付けや出荷の場面で利用者の活躍が見込まれる品目であるかどうかは栽培品目を選ぶ判断の大きな要素の一つです。

そして第二に、その一つの品目を長い期間出荷できるよう作付けをすること。玉ねぎなら4月下旬から7月いっぱいの3ヶ月以上、枝豆なら6月から9月まで4ヶ月というように、一品目に長い期間携わるような計画にしています。特に法人内のB型事業所では、知的障害や発達障害の方の利用が多いため、作業の内容がコロコロ変わるのは利用者にも職員にも負担が大きいと考えてます。そのため、数ヶ月の長きにわたり決まった野菜の収穫、出荷作業を行う体制は、変化に対応しづらい利用者と共に安定的に農業を行うために必然となりました。毎年、出荷が始まる時には、前年がどんなやり方だったか職員も利用者も思い出しながら始まりますが、1週間も経つとあれよあれよと作業がはかどり、利用者の作業量も驚くほど多くなります。これが毎年少しずつでも経験として蓄積されていますから、年々、作付け面積が増えていくことに繋がっていきます。

 それから、法人内の事業所で同じ野菜を栽培していることが挙げられます。玉ねぎ、枝豆、ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草は全ての事業所で栽培しています。これらの品目は、利用者にフィットしていること、長い期間栽培出荷できるからと言う理由もありますが、それ以上に同じ品目を栽培することになると、事業所間で知識や経験、情報や作業する機械の共有が可能になるという大きなメリットがあります。時にはお互いに作業を助けあったり、出荷の不足を補いあったりするということも可能になります。

 例の一つとして、キャベツの出荷に至っては、法人内に留まらず、他の法人の事業所と連携して野菜卸会社と取引しています。定員20名程度の小さな1事業所だけで野菜卸会社と取引をしようと思っても、コンスタントに出荷計画に則って出荷ができるのか、取り扱う量がどのくらいの規模なら相手にしてもらえるのかなどハードルがかなり高く難しいですが、法人内や他法人と連携し出荷計画を立て、集団化することは、取引のハードルを非常に低くすることに繋がります。

 実際の場面では、キャベツの出荷シーズンには毎日コンテナに100ケースを出荷しています。しかし、1事業所で毎日100ケースを出荷するのはかなり負担が多いです。言い訳にしてはいけませんが、支援を行いながら確実に毎日規定量の農作業をこなすことは難しくもあります。しかし、事業所間で連携し、助け合いながら毎日合計100ケースを整えることは可能です。

事業所間で連携することは、毎日変化の多い農福連携の現場の中でも、信頼を得ながら大きな取引先へ出荷をすることができるようになり、出荷が間に合わない、キャベツが足りないなどの予想通りにいかないリスクにも対応を可能にしています。

 このように法人内の事業所間で情報共有や知識、経験の共有が当法人の農福連携を推し進めるためにとても重要であること言うまでもありません。これらを実現するために、我が法人では毎月1回、農業により多く携わる職員を中心とした「農業連絡会議」なるものを開催しております。毎月の農作業の進捗や課題の洗い出しを行い、必要な対応策などを話し合ったり、今後の予定や計画に基づいた道具や機械の整備など、農業に関わるあらゆることを共有するようにしています。この会議によって、法人の前理事長の農福連携イズムが職員へ、そして各事業所へ浸透し、コンセンサスが取れるようになり、農業経営も少しずつではありますが前に進んでおります。

また、我々が社会福祉法人として農業に携わるためのリスクヘッジとして意識している幾つかのことがあります。

リスクヘッジとして意識していること

まず、雨などの天候リスク

農福連携を行っている事業所であれば必ず直面する、悪天候時に何の作業しようかというリスクです。我々の法人事業所も例に漏れず、この問題は必ずつきまといます。では、どうしているのかと言いますと、事前に収穫してストックしておくことが可能な野菜や雨でも収穫ができる野菜類を組み合わせて栽培していることでこのリスクを回避しています。夏時期であれば、玉ねぎは雨の前に収穫を進めておき、雨の間は出荷作業に専念する。また、同じ時期には雨でも収穫作業ができる枝豆の栽培を組み合わせています。冬であれば、キャベツやブロッコリーは多少の雨や雪でも収穫が可能ですから、農作業を少しでも前進させることができます。

何より、このことが雨の日でも、雪の日でも毎日元気に通所する利用者の働きに充足するだけの作業の確保を可能にしています。作業のない(利用者に取り組んでもらう作業がない)日は、落ち着かなかったり不安定になる利用者が多くなるのは私の経験でも明らかです。ですから、働きに来ているみんなの期待に応えられるだけの作業量の確保は我々支援員の最大の使命だとも思っております。

それから、熱中症リスク

群馬の夏は40度に迫る日があるほど、灼熱の日々です。また、5月から9月の間は30度台の気温は当たり前ですから、年間のうち5ヶ月もの長きにわたり熱中症のリスクに晒されています。

農家の方であれば、朝早くまたは夕方涼しくなってから畑に出て、日中は屋根の下で作業をするなどが選択としてあるかもしれません。しかし、農業の時間軸と福祉の時間軸は残念ながら合致することが難しいため、作業を進めるためには工夫が必要です。

我々は、畑作業において機械化を推進していますが、これが熱中症対策の一つになっているとも考えられます。耕運はもちろんのこと、播種、定植、中耕、除草、収穫などその多くの場面で機械を用いて作業をしています。畑での作業をできる限り効率化し、夏であれば圃場における滞在時間をより少なくし、また、作業に関わる人員も限りなく少なくすることは厳しい暑さの中の作業負担をより少なくすることに繋がっております。

機械の導入により、1日がかりで行なっていた作業が1時間で行えてしまうような例もありますから、暑さ対策の一つとして有効であることは間違いありません。

それから、今年は、農福連携等応援コンソーシアムのノウフクラボの事業でウェアラブル端末装着による熱中症対策の実践現場として、私の所属する菜の花をフィールドとしてモニタリング調査をしていただきました。腕時計型のバイタルセンサーを数名の利用者に装着してもらい、熱中症の警戒度を取得するというものですが、期間中においても軽度の熱中症警戒アラートが通知されるなどの経験もさせてもらいました。このような先進的なIT技術の発展と導入は今後、あらゆる人が農業現場で(もちろんその他の場面においても)安心で快適な働きを行う助けになると確信いたしました。

さてさて、今回は私ども社会福祉法人ゆずりは会の農福連携の進め方について触れてみました。あれこれ言っても、毎日、試行錯誤の日々です。
チャレンジと失敗。

それらの経験の積み重ねが私どもの農福連携を揺るぎないものにすると信じて、今日も空を仰ぎ、大地を見つめています。

投稿者: 小淵 久徳

社会福祉法人ゆずりは会理事。ノウフクJAS検査員。自然栽培パーティ関東ブロックリーダー。農福連携技術支援者。農福連携特例子会社連絡会オブザーバー。農業による就労支援を実践。全国の農福連携のリーディングモデルとなることを目指す。

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