ノウフクマガジン#36

ノウサイドな福祉
NEW 2022年8月2日

実践者が解説!「ノウフクHOW TO動画 露地栽培編」

みなさま こんにちは。
前回は、社会福祉法人ゆずりは会の農福連携の全般について触れさせていただきましたが、今回は2022年3月公開の「ノウフクHow to動画」についてお話ししたいと思います。

私どもの事業所では、少品目を規模大きく栽培するという手法をとっており、これが当法人に通所してきている利用者のみなさんにフィットしていると感じています(前回の記事でも紹介しております)。その上で、作業の効率化を行いながらも、様々な障害がある方の特性や個性を活かして活躍の場を広げ、僅かばかりですが、年々規模拡大、売上増に繋がってきています。

今回、撮影いただいた「ノウフクHow to動画」は、私の所属する菜の花でのブロッコリーの種まきから収穫、出荷までを10分ほどの動画に収めていただきました。

20数名の利用者とともに取り組んでいる菜の花の特徴を包み隠さず、盛りだくさんに撮影いただいたものになりましたので、まだご覧になっていない方は、ぜひ、ご視聴ください。

作業プロセスは進化し続ける

では、実際の動画の内容について解説していきます。この種まきから収穫出荷までの一連の流れも、まだ完成形ではないと思っています。それでも、数年前の私どもの栽培方法に比べ、かなり進化を遂げているのは確かです。

種まき(0:41〜)

まず、種まきの場面では、以前は土入れをした128穴のセルトレイに種をまくために、くぼみをつける作業を1穴ずつ手作業で行い、種も1粒ずつピンセットで落としていくという、今では気が遠くなる作業をコツコツと行っていました。くぼみをつける作業はセルの中の土をすり鉢状にくぼませたい為、小さな玉ねぎの頭を使って行っていたこともあります。でも、今では、市販の鎮圧穴あけの道具とセルトレイ専用の播種器を用いて格段の効率化を図れています。

それから、水やりの場面では、以前ではジョウロやホースでじっくり水やりをしていたこともありますが、今は、散水ホースを使って行っています。散水ホースでは蛇口をひねってからある程度の時間その場を離れても大丈夫ですから一枚ずつ水やりをしていたころに比べて、圧倒的に時間が削減できています。

定植(3:53〜)

次に定植の場面です。当初は、畑に綱を張って、均等に穴をあけ、10人以上の利用者とともに1株ずつみんなの手で植え付けを行っていました。今は、全自動定植機を使用して、大半を機械が植え、植え残しを数人の利用者が捕植するという手順です。

また、この定植で我々が重要にしているのが、植え付ける畝(列)がそれなりにまっすぐで、畝(列)の幅が常に均等になることです。これは、その後の除草・中耕の作業に機械を用いて行うためであり、この列の間隔がいい加減だと、せっかく作付けした作物を除草とともに痛めてしまうということになります。そのため、綱を使って植えていた当初から、畝(列)がまっすぐ、また均等になるようにみんなで確認をしながら慎重に植え進めていた記憶があります。今では、機械の設定がしっかりしていれば、本当に数人で問題なく植え進めることができます。

ブロッコリー定植の以前のスタイル
ブロッコリー定植の現在のスタイル

管理(5:36〜)

この後、中耕・除草や防除などの管理もその大半を機械で行います。正直、利用者さんの出番が少なすぎるのでは?と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

その答えについては、最後にお話することにします。

収穫(6:19〜)

ここから、収穫、調整 (出荷規格に合わせる)、出荷と流れていきますが、収穫の場面では、機械の出番は少なくなります。手作業で包丁を使い、収穫を進めていきますが、以前の収穫はすべて職員の仕事でした。包丁を使うこと、サイズや出荷規格に合わせたものを見極める必要があるなど、利用者のみんなにはハードルが高いと職員が思っていたからです。でも、結局は、我々が、彼らの能力を信じていなかっただけで、やり方や仕組みを考えて、システムとして構築すれば、職員以上にできる人も生まれてくることがわかりました。もちろん、安全第一と能力や彼らのその時々の情緒に合わせた作業配置を必要とすることはもちろんのことです。

出荷(8:37〜)

収穫したブロッコリーを作業場へ持ち帰り、調整作業に入ります。この場面でも、一人一人の特性に合わせて、みんなの強みを重ね合わせて作業を進めます。茎の長さがわかる人、小さなはっぱを取るのが得意な人など、仕事を受け渡しながら、一人前(プロの農家と同じ仕上がり)にしていきます。ここでも、数年前まで職員だけが行っていた仕上げの箱詰めの作業も今では複数人の利用者が担っております。

このように、最後は地元の農協へ出荷を行うのですが、彼らが仕上げを行った品質にダメ出しが出ることはほとんどありません。時にチェックが入ることがありますが、それは、畑での野菜の出来によるものであり、出荷調整にかかわるものではありません。

機械の導入は障害者の活躍の場を奪うのか

さて、利用者がより少ない関わりで種まき、水やり、定植、除草、中耕、防除を行っていて、機械の導入が彼らの活躍の場を奪っているのではないか!とお𠮟りを受けそうですが、我々はそれなりに思い描いた栽培ができていると感じます。
それは、利用者のみんなには、収穫(実は収穫ももっと機械や道具を導入できるのではないかと思っています)や出荷調整にたくさん携わってもらい、たくさんの出荷を行う。これまで、たくさん手がかかっていた種まきや定植の人員を出荷調整に回したり(ブロッコリー以外の出荷物も並行して行っていますのでより人員が必要です)、拡大した規模に対応するため、それぞれの活躍の場に出ていくことになります。

機械化は熱中症対策にも

そうそう、群馬の夏は40℃に迫るほど暑くなります。熱中症対策は最も重要な課題の一つですが、圃場での作業を機械化してよりスリムになったおかげで、暑さに対応しづらい利用者がわざわざ猛暑の中、除草作業などで畑に出なければならない機会を減らしていることも事実です。暑い日中は屋根の下でより出荷作業に集中するというのが今の菜の花のスタイルとして定着しつつあります。

このように機械化や道具の導入は、利用者の活躍と利益相反しそうですが、私は決してそのようなことはないと確信しています。そうは言っても私自身、以前は、機械化すると・・・と思っていた一人です。

今後も利用者の活躍を後押しするシステムを模索

これからも試行錯誤を行い、彼らの活躍の後押しとなる方法やより快適な作業環境を模索しながら、日々邁進していきます。

投稿者: 小淵 久徳

社会福祉法人ゆずりは会理事。ノウフクJAS検査員。自然栽培パーティ関東ブロックリーダー。農福連携技術支援者。農福連携特例子会社連絡会オブザーバー。農業による就労支援を実践。全国の農福連携のリーディングモデルとなることを目指す。

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